ガザ女子学生日記

2025年1月28日(火)

2025-02-23 14:16:42
2025-02-23 22:05:37
目次

2025年1月28日、この光景は、感動的な瞬間として決して忘れることが出来ないでしょう。一年半以上にわたる強制移住を終え、北部住民が故郷に戻った翌日の2025年1月28日の朝、私は、ネツァリム検問所を通過する群衆の中に入り歩いていました。離散していることで疲れ切った人たちの顔は、待ちに待った帰還の喜びに輝いていました。

 今日は最高の特別の日です。心待ちにすることの本当の意味を教えてくれた日です。喜びの中に辛い苦しみの涙が入り混じった日でもありました。戦闘が始まって以来、私は久しぶりに心の底から幸せを感じました。この一瞬の喜びから悲しみにうちひしがれた私の心は、再びよみがえったかのような感動を覚えました。歩いていたら、言葉にならない光景に目を奪われました。私の隣を歩いていた青年アハメドは、多くの避難民と同じように家に戻ろうとしていました。すると突然、彼は、反対側を歩くもう一人の青年の方をみていました。一瞬にして全身が震え、雷が落ちたかのように、彼の表情が一変したのです。

 するとどこからともなく、”モハメッド、私の弟、モハメッド“と響いたのです。

その声は、名前を単に呼んでいただけではなく、一年半の別離、祖国を追われ、囲まれた壁と占領によって課せられていた苦悩が込められていた声だと思います。アハメドは、弟のモハメドを遠くから見ていたのですが、彼の心は、その距離感を全く感じずに、アハメドは、矢のように早く駆け寄り、二人の別離の長い苦しい時は、こうして待ちわびた帰還の実現で取るに足らないものとなるのでした。

 そして二人が久しぶりに対面し単なる抱擁ではなく、奪われた心の一部を取り戻すかのような瞬間となりました。それはとても静かな聖なる時のようでしたが、周りの環境は、相反して騒々しいものでした。彼らの両腕は、互いを慕いながら二度と離すまいとするかの様に、また今までの苦しみを消し去ろうとするほどの熱い思いで結ばれていたと思います。

 私は、その場に立ち尽くしその光景を涙を流しながら見ていました。この瞬間を写真に収めずにいられなかった私は、直ぐに携帯電話を取り出し彼らの写真を撮りました。この写真には、私達民族の占領によって課せられた分断等、歴史物語が込められています。彼らの愛情は決して誰からも奪われることはないのです。

 北と南の間は、徒歩で数時間もあれば越えられるような短い距離にも関わらず、これを超えることが出来ない障壁があり、愛する者たちが互いに会うことするできないことがどんなに辛い事か。土地だけではなく、私たちの心にこの障壁は、会えないことへの苦悩と悲しみを植え付けるのです。

 アハメッドとモハメッドの感情は単なる喜びだけではなく、幸せと悲しみが入り混じった複雑な気持ちです。待ちわびた再会の幸福感、今まで耐えてきた苦しみ、移住、痛みに対する悲しみなどが入り混じっているのです。彼らに起こった全ての出来事にも関わらず、こうして再会できたことで、今までの苦しみを十分に和げ、この破壊と混乱の中でつかの間の慰めとなったと思います。

 今日は、苦しみのどん底からでも喜びが生まれる事を、悟った日でした。過去に沢山の苦悩があっても、こうした一瞬の再会で、私たちの心はよみがえるのでした。

この記事を書いた人

Sabara

Sabara(サバラ)22歳 パレスチナ・ガザ地区出身。アル・アクサ大学で英文学を勉強中。情熱的で野心家。写真撮影と読書が好き。2024年11月から日記を書き続けている。