ガザ女子学生日記

2025年1月29日(水)

2025-02-23 14:21:08
2025-02-28 21:39:00
目次

私と友人は、ガザの停戦後、長年に亘る苦痛と緊張の中で重くのしかかっていた全てのことから自分たちを解放するができました。私たちは、失った人生を垣間見ることが出来る日、恐怖や不安なしに深呼吸が出来る日がとても必要でした。そして現実の喧騒や重荷から離れて美しい思い出が再び私たちの心を照らしてくれる日が必要なのです。

 友人と私は、これまでとは異なる瞬間を経験したり、これまで色々な事を経験した上で、まだ、生きているこの命をもっと大切にしたいと思いました。そこで買い物に出かけたのですが、荒廃した通りを、絶望に抵抗するかのように、敢て、私と友人は、笑顔で歩き、廃墟の中からでも喜びの瞬間を見つけようとしました。そしてこれから小さな集まりをするのでそのために必要なものは、全て買い揃え準備しました。この集まりで今までの苦悩と、そしてこれから私たちが大切にしなくてはならないものは、もっと基本的なものにあることについて皆で分かち合うつもりです。

 かつて、活気のあった私たちの破壊された家の屋根に上りました。そこに立ち、私たちは、大地の香りに満ちた空気を一杯吸って、座って昔の笑い話や、愛と情熱で日々を満たしていたことを、思いだしていました。一瞬、私は昔の自分に戻ったような気がしました。かつて夢見ていた少女だった私は、無限のエネルギーを持ち、毎日が人生の新しいチャンスだと考えていました。 今、私は、深い悲しみをもっと美しい感情に置き換え少しでも心に光を取り戻したいと思いました。

 心を込めてコーヒーをいれました。その香りは、温かい抱擁のように私達をつつみこみ、なつかしさで一杯になりました。長い間、味わうことが出来なかったチョコレートを食べました。それを味わった時、初めて経験するような、甘さ、喪失感、そして希望に満ちた人生の味を再発見するような気がしました。私たちは、笑って、写真を撮ったり、こうした幸せな瞬間を思い出に残したいと思いました。そして、互いに不安を分かち合い、先の見えない未来についても語り合ったりしました。

 しかし、その心地よい温かさに浸っている中で、遠くを見ると、家がことごとく破壊された廃墟、荒廃している痕跡が、私たちが失った今までの苦悩を語っていました。 何も破壊されていない建物や明るい窓、遊んでいる子供たちを見る代わりに、なぜこのような厳しい現実を、今、私たちは見なければならないのでしょうか。 なぜ夕日を見ると、息をのむような美しさではなく、まるで私たちと一緒に悲しんでくれているかのように、残骸の上に金色の色彩を注ぐ空が見えるのでしょうか。

 この様なひどいことがあっても、この美しい時を大切にしたいと私は、思っています。どんなに残酷な人生であっても、喜びは少しでも垣間見ることができると思います。 とても苦しくても、私たちの心の中には愛と希望を持つために少しの小さな空間があります。おそらく私たちが持っている空間は広くはないと思いますが、でもこうして大切にするお互いがいて、思い出があり、夢があります。この荒廃した瓦礫の中からも私たちは、夢の花を開かせようとしているのです。

 

 

 

この記事を書いた人

Sabara

Sabara(サバラ)22歳 パレスチナ・ガザ地区出身。アル・アクサ大学で英文学を勉強中。情熱的で野心家。写真撮影と読書が好き。2024年11月から日記を書き続けている。