ガザ女子学生日記

2025年2月9日(日)

2025-03-24 17:29:24
2025-03-27 09:49:37
目次

夜、いつもの様に人生についてそして戦闘が私たちに残した傷跡などについて考えていました。すると、級友から思いがけない電話がかかってきました。興奮した声で、“今日、会いに行きたいわ”と言うのです。最初は信じられなかったのですが、彼女の言葉から、戦闘で私たちが引き割かれる前の楽しかった日々が戻たかのように、胸が一杯になりました。彼女は高校時代の友人であり、人生をともに分かちあってきた人ですが、この様な厳しい環境の中ではほとんど会うことは叶いませんでした。

私は、一番のお気に入りの服を選びました。時計の針が一時間、二時間と動くのを見ながら待っていると、ついにドアを叩く音が聞こえました。そして友人がそこに立っているのを見た瞬間、互いに走り寄り、長く強く抱きしめ、その抱擁は、まるで失われた時を取り戻すかの様に感じました。

私たちは、一緒に座り長い間離れていたことを一切感じさせないぐらい話しつづけ、戦闘中に耐えぬいた全てのことを分かち合いました。互いを慰め合って失ったものの苦しみを少しでも軽くしようとしたのです。幼いころの思い出話をして笑い、戦闘で奪われた事に対して共に涙しました。心に残した傷に対する悲しみとようやく再会できた喜びなどで感情が入り混じっていたと思います。

何時間もの会話で笑い合い、また涙した後に彼女は温かく微笑みながらこう話しかけました。「贈り物があるの。一緒に開けましょうか。」彼女の手の中にある箱をみえて、私の目は感激で贈り物に釘付けになりました。贈り物の中身を見る前から、もう私の心はしあわせで一杯でした。その箱の中には、パレスチナが代表する美しい品々と手作りの刺繍品が入っていました。一針一針に私達の故郷の物語が込められていました。またその箱には、私の大好きな言葉「この地には、生きるに値するものがある」(注2)と、書かれていたのです。

絶望を感じるたびに読み返し大切にしてきた言葉なのに、まるで初めて見るかのようにじっと見つめました。私にとってとても意味深いその言葉は、どんな状況の中でも私たちは生きるに値するという事を、ずっと信じて体現していたからです。私たちは、人生で夢を描き未知の部分も経験しながら、どんなに辛いときでも喜びをもって素晴らしいことを体験することができる資格がみんなにあるのです。

その日はあらゆる意味で特別な日でした。長い間感じたことの無かった幸福感を感じ、ほんの数時間でも心が蘇ったかのように思えました。これは単なる出会いではなく、癒しの時であり、たとえ戦闘中であっても、人生は予期せぬ喜びで私達を驚かせることが出来るという事を思い起こさせてくれました。友人の贈り物は単なる芸術品ではありませんでした。それは、たとえ喪失感に満ちた世界であっても、喜びをこうして祝い、その喜びをいつももち続けるに値するというメッセージでもあるのでした。

私はその夜、友人と一緒に作った思い出に、また色々なことがあってもこの人生に感謝の気持ちで一杯でした。

(注2)マフムード・ダルウィーシュというパレスチナ人の有名な詩人の言葉。

この記事を書いた人

Sabara

Sabara(サバラ)22歳 パレスチナ・ガザ地区出身。アル・アクサ大学で英文学を勉強中。情熱的で野心家。写真撮影と読書が好き。2024年11月から日記を書き続けている。