ガザ女子学生日記

2025年2月19日(水)

2025-05-09 16:48:47
2025-05-11 15:51:13
目次

私は、家族で隣に住む親戚を訪問しました。彼らも私達と似たような生活をしているのですが、彼らは南部ラファから逃れ、避難してきました。街は徹底的に破壊されたので、目印となる建物はほとんど残っていません。しかし街はその廃墟となり、悲しみの中にも関わらず、多くの避難家族を受け入れている現状です。

彼らの家に入った時、唖然としました。そこは、普通の家ではなく、廃墟のモスクでした。モスクの半分は瓦礫と化し彼らはその片隅で暮らしていたのです。残骸となった壁はひび割れて反り返り、今にも崩れ落ちそうでした。そこは彼らにとっては安全な場所ではないのですが、そこしか見つけられなかったのです。

その壊れているモスクの一角でむき出し状態となり、かろうじて住めるようなその場所が、彼らの新しい家となりました。彼らはそこで眠り、食事をして、風が吹けば屋根が揺れるような建物の下でも、残された自分たちの尊厳を懸命に守ろうとしていたのです。

かつては平和と祈りに満ちていたモスクも、今では戦闘の傷跡を残しているのです。その壁には、銃弾の後と埃にまみれて、爆発の残響が響いているようです。空気は湿気で重く感じ、あらゆる隙間から冷たい風が入り込むのです。この静けさはどんな言葉より何ごとかを語っていると思います。

私は、彼らと一緒におそれ多いこのモスクだった建物に座っていました。この神聖な場所がどうして彼らが生きるための最後の砦と化してしまったのでしょうか?避難し疲れ果て、すっかり元気を失っている人々がこの廃墟の中で生き延びる術を見つけることが出来るのかどうかと、考えてしまいます。

こうして破壊されているにもかかわらず、避難民を受け入れているのです。もう何の力も残っていない粉々に破壊されたこの地で、何も持てない人々と痛みを分かち合い、この状況と悲劇を分かち合うのです。どんなに破壊されていてもこうして人々に居場所を提供しているのです。

そこには命を感じさせるものは、何もありません。しかしながら、奇跡の様に耐え抜き、生きる力があるのです。一人ひとりの目が物語っています。恐怖に満ちた夜、一瞬にして崩れ落ちる家、煙と炎の中、子どもを抱いて逃げる母親たちの生き様です。

その瞬間、私は、世界の強さを体で感じました。でも、この家族の強さに比べれば、他のことなど、全てが小さくちっぽけに思えました。生きることをあきらめさせようとする力が働いているこの時に、こうして生きることを選び、人間であり続けることを選んでいる人たちがいるのです。

この記事を書いた人

Sabara

Sabara(サバラ)22歳 パレスチナ・ガザ地区出身。アル・アクサ大学で英文学を勉強中。情熱的で野心家。写真撮影と読書が好き。2024年11月から日記を書き続けている。